恋愛王子の落とし方
どんどん追い上げていって、遂に同点になった。

「頑張れ!!」

あちこちでこんな声が聞こえる。

「……………勝って」

私はただ祈ることしか出来なかった。

時間も残り五分。

そんな時に椿学園がスリーポイントシュートを決めてしまった。

楓の皆は明らかに動揺している。

あと二分。

ヒナタにボールが渡り、シュート!

とはいかず、外れてしまった。

草本くんがなんとかスリーポイントシュートを決め、同点に戻ったがまだまだ厳しい状況だった。

残り三十秒。

ヒナタにボールが。

次こそシュートを。

いけ、いけ、いけ!

シュパッ!!

き、き、決まった!!!

その瞬間、会場中歓喜に沸き上がった。

「おめでと!楓最高!!」

どこからかそんな声も聞こえた。

ここにいる誰もが負けると思っていただろう。

椿より楓の方が弱いのは事実だ。

それに椿は強豪校で毎年優勝している。

そんな椿に楓が勝ったことは今までになかった快挙だ。

楓学園バスケ部の歴史を変えたんだ。

それが嬉しくて嬉しくて。

皆がスゴすぎて涙が出てきた。

「………ヒナタお疲れ」

「なんで、先輩が泣いてんだよ」

「だって、だって…………!」

「応援してくれてありがとな」

頭をポンポンしてくれた。

手が震えてるように思えた。

ヒナタ、やっぱり緊張してたんだな。

「集合!!」

草本くんが集合の合図をする。

一斉に草本くんの周りに集まっていく。

皆、お疲れ。
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