恋愛王子の落とし方
落ち着いたころ、やっと俺は話せるようになった。

話し終わると、姉ちゃんは「よく頑張ったね」と言ってくれた。

俺が悪いのに。

こんな言葉をかけてくれるとは思わなかったから、また泣いてしまった。

「でもあんたカッコ悪いよ?」

「泣くなんてカッコ悪い過ぎだよな」

「いや?その落ち込みようよ」

え?

落ち込んで何が悪い。

「お母さんからの受け取り言葉忘れたの?恋は攻めたもの勝ち。イベントは自分で起こすもの」

そんな言葉、今の俺には無意味だ。

「それが何だよ」

「何って………。あんた分かんないの?忘れられたんなら、新しい思い出を作ればいいじゃない。記憶に残ることすればいいじゃない。何、弱気になってんのよ!そんなヒナタ、ヒナタじゃない」

「姉ちゃんには分かんねぇよ!!最愛の人に忘れられた気持ちなんて!」

「ええ、分からないわよ。でもね、このままじゃダメよ。人は前にしか進めないの、後には戻れないのよ。あんた男なら、いつまでもメソメソしてるんじゃないわよ!!」

顔を殴られた気持ちになった。

人は前にしか進めない。

この言葉が俺の心に響いた。

俺は今までにしがみついていた。

忘れられたショックを理由にして、前の自分になるところたった。

俺は、俺は!!

「俺はまたカナと付き合いたい。何度忘れられたっていい。俺はカナと居たいんだ。カナじゃなきゃダメなんだ!!」

「……それでこそヒナタよ」

姉ちゃんの目には雫が光っていた。
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