恋愛王子の落とし方
「カナ?」

様子がおかしい私に気づいた宮島くんは声をかけてきた。

「…………こっち見ないで」

シーツにくるまって泣いているところなんて見られたくない。

ましてや大切だと思い出した人に。

「………俺はさ、どんなカナでも好きだよ。俺のことなんて思い出さなくていいんだよ。そばに居れるならそれで十分なんだよ。だから、これ以上自分を追い込むなよ」

宮島くんはそれでいいかもしれないけど、私は嫌だ。

せっかく、これまで宮島くんと過ごしてきた時間があるならば思い出したい。

宮島くんが真っ直ぐ言ってくれたのに、私だけこんなのってなんかか嫌。

「宮島くん。私にキスしてよ」

「は!?」

そんなのこっちのセリフだよ。

こんなこと言いたくて言ってるんじゃない。

恋人ぽいことすれば、もしかしたら思い出すかもって思ったの。

「私の意図、分かるでしょ?」

宮島くんは無言で頷く。

そして、ゆっくり顔を近づけた。
< 326 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop