Romantic love
どうしてこんな不思議なことが起きているのかについては、もちろん何もわかっていない。

そらくんは「うさぎちゃんに出会うため」なんてロマンチックなことを言ってくれたけど、実際はどうなんだろう。

同じ区内に住んでいるのなら、その辺を歩いていれば、いつか普通に出会えそうなものだ。

でもそれは、この現象が現実だったらの話だ。

だって、夜中に家が繋がって、その間だけ一緒にいる。

朝になったらそらくんも、ゲートの形跡すらも消える。

そんな不思議な状況で、彼と一緒にいる時間が絶対に現実だなんて、言い切る自信は私にはない。

でも、そらくんがたとえ夢でも幻でも、私は構わない。

もしかして幽霊とか、そんな怖いものだったとしてもいい。

そらくんが本当は何者かなんて、知らなくていい。

今の所、毎晩ゲートが開いて、こうして会えるから、そらくんと日中に会ったことはない。

会ったことないどころか、日中に何をしてる人なのかも知らない。

そらくんも、私がバイトしているのは話したから知っているけど、本職が大学生だというのは、たぶん知らない。

そらくんのことで知っているのは、名前だけ。

苗字すらも知らない。

お互いのことなんて、何も知らない。

そもそも、現実なのかもわからない。

だけど。

たとえ夜の間だけでも。

これがただの夢でも。

そらくんと一緒にいる、それだけで、私はとても幸せ。
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