Romantic love
綺麗な一軒家の前で、お母さんは足を止めた。

「ここが星野ほしのさんち。覚えてない?」

「……うーん、わかんない」

陽子さんは星野さんというらしいが、その名字にもピンとこなかった。

「ま、いいわ」

お母さんはそう言うと、インターホンを押した。

『はーい』

「陽子ちゃん、来たわよ」

『いらっしゃい!開いてるから入って』


…………あれ?

この玄関、知ってる。


ドアの先に足を踏み入れた瞬間、変な感覚に襲われた。

既視感というやつだ。

幼い頃に来てたんだから、記憶があってもおかしくないけど。

でも、玄関の風景が、10年以上も全く変わらない家なんてある?

その棚の上の、綺麗なバラのブリザードフラワーですら、見覚えがあるのに。

玄関の端っこに揃えられた、黒いクロックスも。


……私、最近、ここに来た?

ううん、そんなはずない。

そんな記憶、全くないもの。
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