Romantic love
そらくんに手を引かれてやって来たのは、お母さんが言っていた、例の縁結び神社だった。

境内は鬱蒼とした木々で陰になっていて、さっきまでの暑さを忘れるくらい涼しい。

「ちょー懐かしくない?」

「うん、懐かしいね」

小さい頃に一度だけ、そらくんと一緒にここに来たのだ。


『そらくんと、またあえますように』

『うさぎが月からもどってきますように』

『なんで、おつきさま?』

『うさぎは月にかえるんでしょ?かあさんが言ってた』


あれは、最後にそらくんに会った時。

おばあちゃんが私の家に引っ越すことが決まって、そらくんともう会えなくなるって、お母さんに言われたから……。


『うさぎをぼくのおよめさんにしてください』

『そらくんのおよめさんになれますように』


そんなことを、確かに神様にお祈りしたのだ。

2人共、最近まですっかり忘れていたけど。

小さい頃のお互いの記憶がなかったことも、最近急に思い出したことも、不思議過ぎてさっぱりわからない。

わからないことだらけだから、もう慣れた。

何もわからなくても、こうして会えたからいい。
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