似非王子と欠陥令嬢【番外編】
「…あとこの跳ね橋が例え出来てもさ、この角度だと転げ落ちるよね。
蟻地獄より酷い角度だよ?
ロッククライミングレベルだよこれ。」

予想図の跳ね橋は天空と繋ぐ為最早垂直に近い角度になっている。

防御力最強どころか王宮に入る事すら不可能に近い。

「…確かにそうですね。
あっなら下に風魔術で押し上げる様な魔道具を設置して飛ばしたら大丈夫なんじゃないですかね?
上からは命綱付けてポイーっと。」

「そんなアトラクションみたいな王宮で良いと思うかい?
しかも空まで飛ばすんだよね?
阿鼻叫喚の地獄絵図だし、王宮から帰る時に必ず超高層バンジーって絶対みんな泣くよね。
何人か心臓止まっちゃうよね。」

「楽しそうな王宮ですね。」

「そうだね。
楽しそうか楽しそうでないかと聞かれたら個人的には楽しそうだよ。
絶対議会では通らないけど。」

「そこを含めて計画の見直しが必要ですね。
最もなご意見ありがとうございます。」

「あっいや待って。
計画の見直しじゃない。
飛ばす事から中止だよ?
分かるかい?」

「でもせっかく最強のお城を考えたのに…。」

「飛ばさない方向で考えようか。
ね?」

ルシウスの言葉にキャロルは口を尖らせる。

その会話を聞きレオンはとうとう蹲って爆笑しだしリアムは悟りを開いたかのような表情を浮かべていた。

考える事をやめたに違いない。

ルシウスは頬杖をついてキャロルを眺めた。

手を伸ばし頬についた煤を払ってやると嫌そうに顔を歪めてくる。

何だか懐かないペットを愛でている様な気分になってきた。

「まあ悪気があったわけじゃないのは分かったよ。
でもどうしようか。
城の修繕費とかワインスト侯爵家で払えるのかい?」

「…一応魔術師会で働いておりますので私の資産から払わせて頂けたらな、と。」

「足りないと思うんだけど…。
ほら、あそこの国宝の花瓶割れてるし。
多分宝物庫もぐっちゃぐちゃになってるだろうし。」

「…。」

ルシウスが指摘するとキャロルは身体を曲げ地面に頭を付けた。

「…何やってるの?」

「一応土下座を。」

「…そっか。」

「少しずつ返済という形にしていただけたらな、と。」

「…そっか。」

ルシウスは苦笑いを浮かべた。

背中を丸めて土下座する姿は憐れを通り越して笑いを誘ってくる。

というか貴族の令嬢なのにプライドは無いのだろうか。
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