似非王子と欠陥令嬢【番外編】
「ええっとクリス殿落ち着いて。
キャロル嬢の首が物理的に飛びそうだから。
極刑を避けた意味がなくなるから。」

「あっはいすいません。
少々取り乱しました。」

解放されたキャロルは意識があるのかないのか不明だが眼球がグルグルと忙しなく動いている。

目を回しているらしい。

その様子にレオンが怖々と声をかけた。

「だっ大丈夫かキャロル嬢?」

「…三半規管がやられました。
吐きます。」

「えっまじで?!
ちょっ我慢しろよ?!
今桶かなんか持って来るからな!?」

「あっレオンこれ使え。」

そう言って慌てふためくレオンにリアムが花瓶だった物の底部分を手渡す。

レオンがキャロルの前に置くとキャロルはゲボォと吐瀉物を出した。

国宝の花瓶が残骸となり残った部分にゲロをぶっかけられる様を見てルシウスの目が遠くなる。

国宝と謳われた花瓶の最期がこんな事になるなんて誰が予想しただろうか。

製作した人間国宝と言われる匠もこれを知ったら号泣するに違いない。

ルシウスはレオンがキャロルの背中を摩るのをぼんやりと眺めながら口を開いた。

「…そう言えばレオンって今補佐探してたよね?」

「えっ?
あぁうん。」

「ならキャロル嬢にして貰うのはどう?
魔術師会と並行になるから大変だとは思うけど。
罰としては妥当じゃないかな。
まず資産から返済出来るだけ返済して貰って。
側近の補佐なら給与は良いしそこからの返済と魔術師会の方の給与も減給にすれば1年以内には返せるんじゃない?
あと申し訳ないけどクリス殿の給与からも返済して貰えるならいけそうだよね。」

「俺は別に構わないけど。
キャロル嬢面白そうだし。」

「なら2人ともそれで良いかい?」

「勿論です!!
ありがとうございます殿下!!」

クリスがキャロルの頭を掴み無理矢理土下座させる。

勢いを付けすぎて地面に打ち付けたキャロルの額から鈍い音がしたが大丈夫だろうか。

「…えっとそれで良いかいキャロル嬢?」

不安になり声をかけるが返事はない。

死んだんじゃないかと少々不安になってくる。

「おーいキャロル嬢?
明日の朝迎えに行くからな?
あれ?
聞いてる?」

ペちペちとレオンがキャロルの肩を叩くが反応はない。

首筋に手を当てたレオンは脈はあると頷いた。

恐らく脳震盪を起こしているに違いない。

「…医務室連れてくか。」

「…そうだね。」

何とも言えない空気のまま罰が決まったのだった。
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