似非王子と欠陥令嬢【番外編】
「ってな感じだったわけよ。」

長い話を騙り終えた巫女はふぅと息をついて麦酒を煽った。

「えっ待ってそこで終わり?
その後どうなったんだ?」

「全くハッピーエンドとは真逆に行くけどレオン様聞きたいですか?」

「…いや大丈夫。」

まじかーとレオンは頭を抱える。

巫女はジョッキに麦酒を手酌しながら言葉を続けた。

「元々サイコパスと金髪魔王の未来って9割以上最悪なんですよ。
こいつらは時渡りなんて卑怯技使って捻じ曲げただけなんですから。」

「あー何か前にもそんな事言ってましたね。
見えた未来が吐き気がする程絶望しかないって。」

「そう言う事。
だから見合いをすっぽかした時点でもう未来は決まった様な物だったのよね。」

「なるほどー。
難易度が高過ぎる乙女ゲームって感じだね!
選択肢1つ間違えたら終わるゲームって感じの。」

「人の人生をゲーム扱いとは彩花様やりますね。」

「あっごめんってキャロルさん!
冗談!
冗談だから!」

「いや分かってますよ。
しかし天空の城ですか…。」

「ダメだよキャロル。
ほんとダメだからね。
心を擽られただろうなとは思ったけどダメだからね。」

「分かってますよ陛下。」

ぎゃいぎゃいと騒ぐ面々を眺める巫女にキャロルがふと首を傾げた。

「そう言えば前は私の未来が見えないって言ってましたけど今は見えるんですか?」

「見えないわよ。
全く別の有り得た未来は見えるけどあんたの今の未来はやっぱり見えないわね。」

「それは良かったよ。
未来が決まってるなんて私は嫌だからね。」

「あっ何か過去を思い出してトラウマが。」

「巫女様落ち着いて。
ほら麦酒飲んで忘れて下さい。」

船での記憶を思い出し鳥肌を立てる巫女にキャロルが麦酒を飲ませる。

ルシウスとの初対面は巫女の深い傷になっているようだ。

グイッと麦酒を飲み干した巫女はキャロルに話かける。

「…捻じ曲げてまで掴んだ未来なんだからあんた大事にしなさいよ。
金髪魔王を放置しまくったりせずに。」

「…肝に命じておきます。」

キャロルは苦笑しながら頷いた。

辺りはもう日が落ちて明かりが灯されている。

未来を掴み取った今、彼らのどんちゃん騒ぎは続くのであった。
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