似非王子と欠陥令嬢【番外編】
「…リアム、あの2人がゴーウェン領に行くって知ってたかい?」

執務室で今年度入団した騎士達の配属先を選別していたリアムはルシウスの沈んだ声を聞き顔を上げた。

「えぇ。
1ヶ月程前に視察の書類提出の際聞いてますが。」

「………そう。」

「…まさか陛下聞いてないんですか?」

黒々としたオーラを出しながら頷くルシウスにリアムは深い溜息を着きながら眉間を抑えた。

「…あいつら全く。
陛下に声を掛けとけと言ったんですが。」

「…なんで私は聞いてないんだろうね。」

「キャロル妃の事ですから言おうとしていて新薬の開発に夢中で忘れ去ったのではないかと…。」

「…大方そんな所だろうね。」

ルシウスは深過ぎる溜息を吐いた。

キャロルは王妃としては仕事が出来ている。

元々オーバーワークを幼少期からこなしていた人間だ。

魔道具開発をやっていただけあり新しい事業や開発を得意としている。

賭事や贅沢、色事にも嵌る事はなく何かあれば現場に視察に飛び出し的確な対処をして帰って来る。

人格の心配をしてはいたが蓋を開けてみれば王妃としては素晴らしい人材だった。

ルシウスの事を忘れ去る癖以外は。

知らない間に何処かに出掛けている事など日常茶飯事である。

帰って来る度叱るのだが喉元過ぎれば何とやらで忘れて何処かに出掛けてしまう。

そして何よりルシウスを凹ませるのはルシウスには言わないのにレオンとは必ず行動を共にしている事だ。

あの2人は昔から仲が良かったが今でもそれは変わっていない。

あの2人に限って何かあるとは思わないが夫であるルシウスよりもレオンを優先されると面白くはない。

「まあ今回はゴーウェン領で温泉が沸いたとの事で、温泉街にしに行くと言ってましたよ。
国が繁栄するのですから目を瞑りましょう陛下。」

「…それ絶対1週間じゃ帰って来ないやつだよね。」

「…おそらく。」

ルシウスは顔を掌で覆った。

このパターンも何度も経験済みである。

大体一週間後に鴉便が来て視察期間の延長の書類が届くのだ。

経過報告もきっちりしており延長理由も正当な為認める以外ない書類が届いてしまうのだ。

温泉街にするとなると恐らく1ヵ月は帰って来ないであろう。

「…まあまあ。
不貞行為等はないのですから落ち着きましょう陛下。」

「当たり前でしょ。
あったら八つ裂きじゃ済まさないよ。」
< 3 / 35 >

この作品をシェア

pagetop