淡い光

ああそうか私は今、生死の境目に居るのか。
このトンネルを抜けたらきっと、もう元には戻れない。

しかし私は理解していた、このトンネルを抜けなければならないと言う事を。

彼が言っていた準備をしなければならないと言う意味はこの事だった。

死ぬ準備を、それを待ち構える心の準備をしなければならないと言う事だった。


私は振り返らない、ただ真っ直ぐと自身に与えられた道を進んで行く。

暗いトンネルの中は、不思議と温かい気持ちになる、次第に心持ちが明るくなり元気になっていくのだ。

瞬間に水の中にいる様な感覚に襲われ、頭上から母の声が聞こえた。


ーーー元気に産まれて来てね


響く母の心地良い声と共に男の子の赤ん坊が脳内に浮かぶ。
< 13 / 15 >

この作品をシェア

pagetop