“愛”の色は、何色ですか?


「タロウ君を逮捕して初めて彼を取り調べした時、

その様子を隣の部屋から見守ってたんだ。

その時に・・気になる事が幾つかあった。」


「・・・・・。」


「その中の一つが、

ミハルちゃんが帰宅して“鉢合わせ”した時の事だった。

君の証言にもあった事だけど、

その場から立ち去ろうとして、
タロウ君は君にぶつかった。」


「はい・・。」


「中原先生が、『タロウは優しい子』という話をしてくれた時、こうも言ってた。


『落ち着きの無いタロウは、
よく暴れ回っては人にぶつかっていた。

でも何故か、ミハルにだけは絶対にぶつからなかった。

“ミハルは目が見えない”
っていう事をちゃんと理解していて、

ビックリしないように、

いつも傍を通る時はスピード緩めてあの子の歩行を優先してあげていた。』って。」


「・・その通りだったと思います・・。」


「でも・・・そんな彼が、

どうしてあの時だけはミハルちゃんにぶつかって逃げたのか?って引っ掛かってた。

もしかしたら彼は、【“わざと”ぶつかったんじゃないか】ってね。」


「・・どうして・・ですか?」


「・・・炎が包むあの現場の中で、
確実に“自分の指紋”を残したかったから。

・・君からの証言を聞いた刑事が、

“きっとミハルの服から指紋を採取してくれる”って考えたんだと思う。」


「・・・・・・・・・・・。」

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