きっともう好きじゃない。
まっすぐな恋
◇
2月も終わりかける頃、わたしはめっきり部屋から出なくなっていた。
体調が悪いだとか、気分が滅入っているだとか、そんなのではなくて。
「姉ちゃん、お母さん怒ってる」
ノックがないのはもういつものこと。
部屋に入ってきた薫がわたしの肩越しにパソコンの画面を覗く。
「今度は洋画?」
「怖くてあんまり見なかったんだけどね、がっつりホラーじゃなかったら意外とハマるよ。面白い」
「あっそ。スマホ借りるから、さっさとご飯食べてきたら」
スマホを借りるだけ、ではなくてわたしの部屋に居座る気のようで、ベッドに横になった薫がさっそくゲームアプリを開く。
わたしはパソコンの電源をつけたまま部屋を出た。
事のきっかけは、まおちゃんがドラマの最終回の日に家に来なかったことだ。
拡大バージョンだったのに、観られなかった。
しばらくは配信していると知って、わたしもまおちゃんと同じ動画配信サイトに登録した。
無料の間に解約するつもりだけど、それまでは目一杯活用させてもらおうと思っていたらこの有様。
邦画から洋画まで、古いものから最新のもので。
時間がいくらあっても足りない。
お父さんに自信があると言ったテストはこの間終わったのだけど、すごく良いとは言えなかった。
まあ、悪くないかな程度。
お父さんは結果を見て褒めてくれたけど、お母さんには、どうしたの?って言われたし。
勉強のことであまりうるさく言われたことはなくて、単純にこれまでと比べると落差が目に見えていたからの発言だと思う。
ちょっと調子が悪かったかも、って伝えたら、連日パソコンに夢中になって勉強をしていなかったことを知っているはずなのに、そんな理由で納得してくれた。