きっともう好きじゃない。
「ねえ、まおちゃん」
「んー?」
「彼女、どんな子?」
聞かなきゃいいのに。
聞きたくないくせに、口が勝手に動く。
「どんな、って。容姿? 性格?」
「どっちも」
どっちもじゃないよ。
どっちも知りたくない。
そんなのどうでもいいって突っぱねてよ、まおちゃん。
「髪はショートで右目だけ二重でそばかすがあって……運動部だから足の筋肉とか割とある。性格は一言で表しづらいけど、まあ明るいやつ、かな」
考えるような間を置いて、まおちゃんは一息に言った。
全部初耳だった。
まおちゃんに彼女がいることは知ってたけど、名前も顔も聞いてないし見てないから、ずっとのっぺらぼうで想像してたのに。
髪はショートで、色はどんなだろう。
右目だけ二重ってことは、左目は半端なのかな。
そばかすってあんまりちゃんと見たことないや。
のっぺらぼうの無造作に伸ばしていた髪を短くイメージし直して、目とそばかすをつける。鼻とかくちびるは適当に考えた。
ぼんやりと覚えてるまおちゃんの高校の女子の制服を着せて、足をがっしりとさせて、くるりと一回転させてみる。
これが、まおちゃんの彼女。
合ってるかわからないけど、のっぺらぼうよりは明確なイメージの彼女がわたしの頭の中でくるくる回る。
楽しそうに、嬉しそうに。
どこからともなくやってきたまおちゃんと手を繋いで遠くへ行ってしまう前に、ぎゅっと目を閉じて彼女を頭から追い払う。