きっともう好きじゃない。


「開けとけよ」


「だって、いつ帰るか知らなかったし」


「お母さんに言った。眞央が半ドンで俺も午後1時間で終わりって」


「聞いてませんが?」


たぶん忘れたんだと思うお母さんもちょっと悪い。

だけど、薫。どうしてわたしに言わなかったの。


ドアノブを握る手をプルプルと震わせながらドアを支えていると、向こう側からまおちゃんが引いてくれた。

ぱちっとまおちゃんと目が合って、すぐに離れた。

まおちゃんの黒目がそっぽを向いたから。


「姉ちゃん邪魔」


どう見ても狭くて押し退けないと通れない幅のわたしの腕の下を通って家に入った薫の荷物の量に目を瞬く。

両手にパンパンのビニール袋。

左手にひとつと右手にふたつ。


まさか薫にぜんぶ持たせるわけがない、とまおちゃんの手元を見ると、ドアを支える左手には何も持っていないけど、右手に3袋。

思わず、勝手に口が動いた。


「馬鹿なの……?」


どっちが先導してこんな無茶な買い物をしたのかは、正直わからない。

どちらにせよ、片方が乗っかったことに変わりはないから。

単に袋詰めが下手なだけなら許せた。

だけど、どの袋も膨れ上がり、持ち手は細く捻れて千切れそう。


「残念。バカは眞央だけでした」


鼻で笑った薫がリビングに向かうから、まおちゃんとふたり取り残される前にそのあとを追いかける。

代わりにひとりで取り残されたまおちゃんのこと、振り向けなかった。


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