きっともう好きじゃない。
まっすぐに。
ただ、まっすぐに。
愚直だと笑われるくらい一直線に想っていたら、心のまま届くと思ってた。
「まおちゃん……?」
しっかりとまおちゃんに追いついて、その腕を握る薫の手を弱い力で押す。
意図を察してくれたのか、薫は躊躇いがちに手を下ろした。
そうして、少しずつ後ずさっていく。
すぐそばにいるけど、視界から薫が消えたあとで、わたしは両手でまおちゃんの頬を包む。
「わたしのことを想うと、苦しい?」
好きか、嫌いか。
そういう聞き方をしたら、困ると思った。
どちらの気持ちもまおちゃんは持っているんじゃないかな。
まだ、好きでいる。
だけど、もう、嫌いでいる。
そんな具合だとしたら、どちらかに片寄るのはきっととてもつらい。
「ああ、苦しい」
「わたしも、苦しいよ」
その意味は、ちがってしまうのかもしれない。
息ができないほど、苦しい。
守りたかった恋だった。
話の全容がまだ見えていないわたしでも、わかることがある。
まおちゃんはきっと、まおちゃんのそばでわたしが傷付くのが嫌だったんだと思う。
だから、わたしのお願いを飲んでくれた。
それを撤回するだなんて虫がいい話をまおちゃんに持ちかけたところで、最初からわたしとまおちゃんは好きでいることをやめた理由が違ったんだ。
わたしはもう、苦しみたくなかったから。
まおちゃんは、わたしを傷付けたくなかったから。
わたしの想いはもう、苦しまずいられるけど。
まおちゃんのその心配は、今もこれからも続いていく。