きっともう好きじゃない。
まおちゃんが来たことを合図にシャットダウンをしていると、部屋にパッと明かりがつく。
眩しさから逃れるように視線を部屋の隅にうろちょろとさせる。
「飯食ってこい。おばさん待ってるから」
「え、もうできてるの?」
「呼んでも返事ないって言ってたけど。寝てるのかと思ったら起きてるし」
呼ばれてたっけ。
ヘッドホンはつけていないし、部屋がうるさかったわけでもない。
お母さんの声が小さかったんじゃない? なんて言ったら、じゃあ部屋のドアはずっと開けていなさい、とか言われそうだ。
「今日何だった?」
「グラタン」
「まおちゃんは?」
「家で食ってきた。はよ行け」
しっしっと手を振ってわたしを追い出そうとするまおちゃん。
ひどいなあ、と唇を尖らせてみるけど、こっち見てない。
ビニール袋を机に置くと、わたしが退いた椅子に深く腰掛けて、まおちゃんはスマホを触り始めた。
何の断りもいれずに、充電器をわたしのスマホからまおちゃんのスマホにすげ替えてたけど、これはもういつものこと。
まおちゃんを部屋に残してリビングに向かうと、お母さんがわたしを見て少しだけ怒った顔をする。
弟の薫はさっさと平らげたみたいで、グラタン皿の端っこをスプーンでガジガジとこさいでる。
「和華、呼んだら早く来てよ。冷めたら美味しくないんだから」
「お母さんの料理なら冷めても美味しいよ」
「そういうことじゃなくって」
お母さんって、怒るのが苦手なんだと思う。
ガミガミ言わないし、言葉だって優しい。
それより、お母さんの後ろでずっと皿をガジガジしてる薫だよ。
傷がつくからやめなさいって早く言わなくていいのかな。