きっともう好きじゃない。


「ないよ」


「クラス写真とかは?」


「ない。クラス違うし」


頑なに嫌がる意味がわからない。

本当に写真がないなら、食い下がってもくどいだけ。


わたしとまおちゃん、何年一緒にいると思ってる?

いちばん理解してる自信ないし、知らないことの方が今は多いかもしれないけど、まおちゃんが何か隠したがってること、わかるよ。

目に見える癖なんてないし、何かって何なのかまでは汲み取れないけど。


「彼女さんのメッセージ、ちょっとだけ見せて」


「やだよ。なんで?」


写真に限らない話をした途端に強気に出るのも、もしかして理由があるのかな。

語調が強くて、怖気付いてしまうけど、きゅっとくちびるを引き結ぶ。


「……わたしが、まおちゃんのこと」


迷いながら、湿ったくちびるを開く。

まおちゃんの癖はいくつも知らないくせに、わたしの癖ってたくさんあって、そのほとんどはまおちゃんに見抜かれてるんだと思う。

考えがまとまらないまま口にして、言葉に詰まってしまうところとか、今まさに。


「まおちゃんのこと、ちゃんと……」


言っちゃダメだ。

好きって言葉以外でも、好きって気持ちは伝わる。

だから、いつも慎重になってたのに、その努力さえ一瞬で消えてしまうかもしれない。


立っているのが辛くなってきた。

足が小刻みに震えて、手の指先もしっかりと握り込んでいないと全身の力が抜けてしまいそう。


「わたし、いつかは、まおちゃん離れしないといけないでしょ」


100点満点のうち、何点の答えを出せただろう。

ほっと息をついて、ベッドに雪崩込むように膝から座る。

まおちゃんとは適度な距離を取って。


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