きっともう好きじゃない。
すり切れた恋
◇
あの日から、わたしとまおちゃんはちょっとだけギクシャクしてる、ような気がする。
わたしが何となく気まずいなって思ってるから、勘違いと言われてしまえば納得もできる程度の違和感。
いつも家に来るわけじゃないし、毎日メッセージのやり取りをするわけじゃないけど、ポストを確認したりとかコンビニに出かけようとすると、二日連続でまおちゃんに鉢合わせた。
タイミングが悪いなって思ってしまったこと、たぶんまおちゃんにも伝わってた。
週末になれば、ドラマの最終回があるからまおちゃんは家に来る。
だけどその前に、2月14日が待ち構えていた。
「かおるー……どうしよう、ねえ」
午前授業ではやく帰ってきた薫にまとわりついて10分。
最初のうちは適当に相槌だけくれてた。
それから、姉ちゃんウザイって言い出した。
で、今はもう完全無視。
今日はテレビゲームではなくて携帯ゲームだから、わたしの補助も必要なくて、ソファに座る薫を横からつつく。
時間制限もHPもないゲームだからって無遠慮にちょっかいをかけて話かけていたせいで、操作をひとつミスしたらしい。
いらないアイテムを余計に作ってしまったみたいで、チッと舌打ちを零すと、しっかりセーブをして電源を切る。
「一言だけ言ってやる。助言でも何でもないけど」
「え、なに?」
「まず、姉ちゃん。勘違いも大回りしすぎると面倒なんだよ。次に眞央。俺やっぱりあいつのこと嫌いじゃなくて大嫌いだ」
一言って、わたしとまおちゃんにひとつずつあるんだ。
勘違いも大回りすると面倒。
口に出して復唱すると、薫は大きく頷いた。
「姉ちゃんもわかってるんじゃないの」
また、そうやって不服そうな顔をする。
何を指し示して言っているのか、心当たりがないわけじゃない。
薫の言う、勘違いの意味も、何となく輪郭は見えてる。