きっともう好きじゃない。


明日はちゃんとまおちゃんを突き放すから。

今度はちゃんと、これが最後って決めるから。


だから、もう少しだけまおちゃんと一緒にいさせてって、わたしのワガママを叶え続けてきた。


「ずっと一緒にいられるってわかってるなら、願ったりしない」


まおちゃんに彼女ができたから。

きっとわたしとまおちゃんはずっと一緒にはいられない。

それでも、何かの間違いか奇跡が起きて、もしかしたらずっと一緒にいられるかもしれないって思ってた。


心構えも、覚悟も、切なさも、ぜんぶ抱えてきた。

捨てられずにずっと持っていなきゃいけないって思うと、大切なはずのそれを粉々に砕いてしまいたくなるくらい。


「まおちゃんに彼女がいないなら、わたしのぜんぶ、無駄だったってこと……?」


涙に濡れたひどい顔で薫を見上げた。

薫はびっくりしたみたいに目を見開いて、それから苦しそうな顔をする。


「だから、俺、言っただろ。眞央はやめとけって」


「ねえ、なんでまおちゃん、嘘つくの?」


「知らねえよ」


胸も頭もいっぱいいっぱいで、もとから満ちていたものが溢れていくのか、押し寄せた新しい感情が零れていくのか、わからない。

薫を困らせたいわけじゃない。

聞き分けなきゃいけない。子どもじゃないんだから。

まおちゃんが本当に嘘を吐いているのか、もうほとんど疑いに向いているけど、薫の憶測で勘違いかもしれない。


まおちゃん、何で嘘を吐いたの?

もし、わたしと薫の勘違いで、まおちゃんに本当に彼女がいるのなら、それでもいいんだ。

嫌だって思ってたくせに、そっちの方がややこしくないよって言いたくなるわたしもいる。


まおちゃんが隠してることぜんぶ、教えてよ。

嘘を吐くのなら、吐き通すか本当になるまでボロを出さないでよ。


わたし、まおちゃんのことが好きだ。

たぶん、まおちゃんもわたしが好きだった。

でも、まおちゃんはわたしのこと、きっともう好きじゃない。

まおちゃんに彼女ができて、そう思ったから諦める準備とか、ぜんぶまおちゃんの前では無駄にしながらも頑張ってきたのに。


わたしもう、まおちゃんがどうしたいのかわからない。


< 50 / 137 >

この作品をシェア

pagetop