きっともう好きじゃない。
「姉ちゃん、誰かに会ったり何か遭う……いや、その前に俺がどうにかしてやるから、行ってみようよ、な?」
「何でそこまでしてくれるの? かおる、まおちゃん嫌いなんでしょ」
「だって、姉ちゃんは眞央が好きじゃん。そこに俺の好き嫌いは関係ない」
さっぱりしていて、でも芯がちゃんとあって。
こんなんじゃ、薫とわたしどっちが年上なのかわからない。
薫ってわたしのことすっごい好きじゃん、こんなの。
人のこと放っておけない性格なのは知ってたけど、こんな面倒な姉にまで親身になってくれる。
「は? おい、何でまた泣くんだよ」
「かおるが良い弟すぎて……好きだよ、かおる」
「やめろキモい。見ろこの鳥肌」
「うわ、きもい」
ずいっと差し出された腕にはびっしりと鳥肌が立ってる。
つい見たまんまの感想を述べると、怒るかなって思ったのに安堵してるように見えた。
これもたぶん、場の空気を変えるための言動なんだろうな。