きっともう好きじゃない。





まおちゃんの高校は最寄り駅と同じ名前。

駅の真隣にグラウンドがあって、運動公園か何かなのかなって思ったんだけど、ここって薫が指さすからびっくりした。


「大きいね」


「そりゃあ、姉ちゃんの学校に比べたらな」


わたしの学校は三階建てのビルの真ん中にある。

本校じゃないから、フロアは狭いし先生も少ない。

いちばん上の階はずっと空っぽで、テナント募集の張り紙はビルの外観と三階を封鎖するロープに貼られているけど、もうボロボロだった。

一階はたまにセミナーを開催しているみたいだけど、実態はよく知らない。

年配の人から大学生くらいの人まで、色んな人が出入りしてる。

そういう人達に出会すことのないように、二階には裏口に階段があって、生徒はほとんどがそっちを使ってる。


グラウンドの外周を回って正門を探しながら、校舎を見上げる。

一見しただけでは中学校か高校かわからない外観と雰囲気に、肌の下がざわざわする。


「名前は?」


「は、はるひさん? ていうか、ねえ、これってまおちゃんに会うかもしれないんじゃ……」


「まあ、いるだろうな」


前を歩いている薫がどんな表情をしているのかはわからない。

だけど、声は軽いし飄々としてる。

さらりと肯定を返されて、わたしはその場に立ち尽くした。


「何してんだよ」


周りは車も人も通っていなくて、足音が止んだことにすぐに気付いた薫が立ち止まって振り向く。

怪訝そうに歪められた顔を見て、そんな顔をしたいのはわたしの方だと言いたい。


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