きっともう好きじゃない。
◇
まおちゃんの高校は最寄り駅と同じ名前。
駅の真隣にグラウンドがあって、運動公園か何かなのかなって思ったんだけど、ここって薫が指さすからびっくりした。
「大きいね」
「そりゃあ、姉ちゃんの学校に比べたらな」
わたしの学校は三階建てのビルの真ん中にある。
本校じゃないから、フロアは狭いし先生も少ない。
いちばん上の階はずっと空っぽで、テナント募集の張り紙はビルの外観と三階を封鎖するロープに貼られているけど、もうボロボロだった。
一階はたまにセミナーを開催しているみたいだけど、実態はよく知らない。
年配の人から大学生くらいの人まで、色んな人が出入りしてる。
そういう人達に出会すことのないように、二階には裏口に階段があって、生徒はほとんどがそっちを使ってる。
グラウンドの外周を回って正門を探しながら、校舎を見上げる。
一見しただけでは中学校か高校かわからない外観と雰囲気に、肌の下がざわざわする。
「名前は?」
「は、はるひさん? ていうか、ねえ、これってまおちゃんに会うかもしれないんじゃ……」
「まあ、いるだろうな」
前を歩いている薫がどんな表情をしているのかはわからない。
だけど、声は軽いし飄々としてる。
さらりと肯定を返されて、わたしはその場に立ち尽くした。
「何してんだよ」
周りは車も人も通っていなくて、足音が止んだことにすぐに気付いた薫が立ち止まって振り向く。
怪訝そうに歪められた顔を見て、そんな顔をしたいのはわたしの方だと言いたい。