きっともう好きじゃない。


薫は制服ではないし、敷地に入るのは厳しいと判断して、正門から少し離れたところで塀に寄りかかる。

こんなところにいたらまおちゃんに一目でバレるって言ったんだけど、聞いてくれなかった。


前に組んだ両手を何度も組み替えながら、未だに生徒が出てこない校舎を見つめる。

薫はわたしのスマホをかっさらって、ネットで何かを調べているみたい。

来るときもわたしのスマホで時刻表を見ていたし、薫が調べ物をしたいというのなら見られて困るものもないスマホくらい貸すけど。

そんな、わたしよりこなれた操作を見せつけなくてもいいのに。


画面をスクロールする指は滑らかだし、文字を打ち込むのはえらくはやい。

何をしているのか気になって薫の手元を覗くけど、ちょうど開いていたタスクをすべて閉じたところだった。


「何してたの?」


慌てて閉じた様子じゃなかったから、たぶん調べものが終わったタイミングでわたしが覗いたんだと思う。


「別に」


押し付けるようにスマホを返される。

履歴を見れば何を調べていたかはわかるけど、そこまでするほど気にならなかったから、カバンの中に仕舞う。


ふあ、と薫が欠伸を零したとき、校舎からチャイムが聞こえた。


それからしばらくも動きはなかったけど、二度目のチャイムが鳴ってまもなく、ぞろぞろと制服姿の生徒たちが駅に向かって歩いていく。

遠くに目を凝らすと、グラウンドの反対側にも人が歩いていて、何も出入口は正門だけではないことに気付いた。

ハルヒさんは部活があるんだろうし、まおちゃんがあっちの道を通ってくれたらとりあえずわたしの不安と心配は晴れる。


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