きっともう好きじゃない。


まおちゃんの姿は見かけないまま、グラウンドには部活生が集い始めていた。

明確な線分けはないのだけど、どこをどの部活が使っているのか、一目でわかる。

ソフトボール部と野球部とサッカー部がグラウンドを3分割して、陸上部は駐車場の空いたアスファルトに集って座っていたり壁に凭れて駄弁っていたりと、パッと見の印象は自由。


段々と人が増えてきて、人数はざっと数えて30人から40人程度。

監督らしき人の姿は見えないまま、他の部活よりも少し遅れて練習が始まった。


アップってどんなことするんだろうと若干身を乗り出しながら見ていたとき、二列に並んで正門を出てきたから、ぴしっと塀に背中をはり直す。


「外走るんだ……」


「あの中走るより外周のがいいんだろ」


校舎側に回って行ったから誰もちゃんと顔を確認できなくて、周回してくるのを待つ。

どれくらいの距離があるのか、何となくでしかわからないんだけど、見ている分にはかなりはやく感じられるペースで一周してきた。


先頭から順に目で追いかけていく。

その間にもペースは落ちないから、見逃した人は次の周で確認。


「かおる、ちゃんと見てる?」


「は? 誰かわからないんだけど」


「え、あ……」


そうだ、陸上部なことを突き止めただけで、薫に伝えていなかった。


「髪、ショートでそばかすがあるって言ってた」


「はあ?」


思いっきり眉を寄せる薫が言いたいこと、わかるよ。

これはわたしの落ち度だ。ごめんね。


「先に言えよ、ドアホ」


「う、ごめんって」


そういうやり取りをしている間に3周目が終わったようで、結局最終尾の方は確認できないまま、部員たちは敷地内に戻っていく。


「そんなの知らないから、インターバルのときに声かけようと思ってたんだけどな、俺は」


「なんか、伝えてるつもりになってた」


ハルヒさんが実在するってことにも気を取られていたし、仕方ないと割り切ろうにも、薫は不機嫌な顔のまま。

何となく気まずい空気が流れる中、フェンスと樹木に遮られて見えにくいけど、練習風景を観察する。

外周を回っていたときと同じ列でラダーを素早く走り抜けていく様は、テンポもズレずに統一された動きに見えた。

部活ってそういうところ、すごい。

身についてるんだなって、目に見えてわかるところとか。


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