きっともう好きじゃない。
せーの、なんて掛け声で蓋を開けると、いちばん上には手紙が入っていた。
わずかに黄ばんだ白地の封筒には『わか へ』と書かれている。
手紙を手に取ると、まおちゃんは下に重なっていたもう一枚の手紙を指先で持ち上げた。
たぶん、そっちの手紙には『まおちゃん へ』って書かれてる。
もしかしたら、ちゃんはついていなくて『まお へ』かもしれない。
この手紙は小学生のときに隣の席の子へ書いたものだ。
たまたま同じクラスで、たまたま隣の席だったから、お互いに宛てた手紙になってる。
もう、封は弱くなっていて、何度も読み返したことがわかる。
まおちゃんは懐かしいって言ったけど、この手紙、確か二年くらい前に見つけて読んだし、その一年前にも読んだ記憶がある。
たまに見つけては、懐かしいねと言い合って、何となく内容を覚えている手紙を読み返すんだ。
「えっと、和華へ」
「いや読み上げるなよ」
「いいじゃん。まおちゃんだって何書いたか覚えてるでしょ?」
罫線に窮屈そうに詰められた文字を追いかけて、口に出していく。
「いつも仲良くしてくれてありがとう。どういたしまして」
「返事すんな」
「友だちの中で和華がいちばん好きです。うん、わたしも好きだよ」
よかった、声、震えなかった。
なんで黙るの、まおちゃん。
なんか言ってよ。恥ずかしいから。
「これからもずっと一緒にいてね。まおちゃんが嫌になるまで一緒にいるつもりだよ」
そろそろ何か言ってよ。
あと一行なんだけど、これ結構つらいかも。
「和華、大好きだよ」
どれだけわたしのことが好きなの?
すっごい好きじゃん。
繰り返すくらい、大をつけるくらい、好きなんだね。
好きだったんだね、わたしのこと。
「……ありがとう、まおちゃん」
手紙から顔を上げて、まおちゃんの顔を見て言う。
照れないように、顔が赤く染まらないように、なるべく平静を装ってはにかんで見せると、まおちゃんはふいっと目を背けた。