きっともう好きじゃない。
「俺は久野薫。で、こっちが姉ちゃんの和華」
「オッケー。薫と和華な。ふたりは中学生?」
たぶん、じゃなくて確実に、篠田さんに悪気はなかった。
薫は合ってるけど、わたしまで中学生に間違われるなんて。
「どう見たって和華ちゃんは高校生でしょ」
小さくショックを受けていると、そのショックを一瞬でかき消す陽日さんの一言。
それを聞いて、ようやく顔を上げられた。
「和華ちゃん、そうだよね?」
「はい、1年です」
答えながら、ちらっと篠田さんを伺い見る。
わかりやすく、しまった! って顔をしているかと思うと、パンっと両手を合わせられた。
「ごめん! いっこ下か。うん、言われて見れば中学生には見えないな」
「そういうの苦しいからやめなよ」
陽日さんのツッコミに思わず頷いてしまいそうになる。
隣では鼻で笑ってるやつがいるし。
「でも、薫は中学生だろ? あんまり遅くまで引き止められないから、さっそく本題に入らせてもらうよ」
いい? ってわざわざ確認してくれる篠田さんに、緊張を滲ませながらも頷く。
いつでも話していいよって雰囲気になって、わたしはゆっくりと口を開いた。
「須藤眞央」
たったの5文字を宙に吐き出しただけで、息継ぎが必要だった。
それくらい、内側から圧迫されて、苦しい。