きっともう好きじゃない。


彼女がいるのはまおちゃんの嘘だったけど、まおちゃんの気持ちはまだ何もわからないままだ。

まおちゃんはわたしを好きなんだって、好きだったんだって、何も疑わずに抱いていたけど、それだって今はもうすり変わっているのかもしれなくて。


どこか、仕返しのような気持ちもある。

困らせてやりたいって、心のどこかで思ってる。


色んな情動に駆られてのことだけど、好きなのは本当だから。


「好きにすれば」


ありのまま、思っていることをぜんぶ薫に伝えたら、渋々納得してくれた。

薫の隠し事も、いつかは知りたい。

どの順序が正しいのかなんてわからないし、まおちゃんをいちばんにするのは、実はとても間違っていることの可能性だってある。


それでも、伝えたいし、聞きたい。


「ありがとう。ごめんね、かおる」


「いいよ。頑張れ」


こちらを見ようともせずに言った薫の顔を窓ガラスの反射越しに見る。

伏せた瞼、噛んだくちびる、刻まれた眉間の皺。

頑張れって言うような顔じゃないんだよ、薫。


通路を挟んで向こう側の席には誰もいなかったから、わたしは薫とは反対にそちらの景色を眺める。

暗くて、何も見えない。

代わりに、わたしの顔が窓ガラスに映っていた。


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