きっともう好きじゃない。


「大方、和華が考えてることはわかるよ」


「まおちゃんにぜんぶお見通しだもんね」


心の内側、ぜんぶまおちゃんに見えているみたいに。

きっとそんなことはなくて、わたしがわかりやすいだけなんだけど。


嬉しいような、悔しいような。

くちびるを噛み締めるのと同じくらい、奥歯も噛みたくなる。


「俺に彼女がいるって信じたくなかったの?」


本題を遠回しにしないような言い様に、生唾を飲む。

静かな空間ではその音も吐息もぜんぶ聞こえてしまう。


「まおちゃんのせいだよ」


簡単にわたしに触れるから。

本当にまおちゃんには幼馴染み以上の情がなくて、彼女に遠慮する必要もないくらい、稀薄な存在なのかなって悲しくなって。

それから、まおちゃんがわたしをからかっているんじゃないかって憤りたくなって。

見ているだけじゃわからないところにまで踏み込んでみようとしたら、この始末だ。


まおちゃんの嘘がポロポロ零れて、両手に抱えられないほどになった。


「……まおちゃん、わたしのことどう思ってる?」


「どうって?」


質問に質問で返すところ、本当にずるい。

好きって思ってる? って聞いたとして、困るのはまおちゃんだけど、もっと困るのはわたしだもん。

こんな、逃げ場のない空間でそれを聞く勇気がない。


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