きっともう好きじゃない。


まおちゃんのつま先をずっと見ていた。

どこを見ていても落ち着かなくて、まおちゃんのつま先がいちばん見慣れていると思ったから。

いつも、まおちゃんの顔を見ていられなくなると、足元に目を落としていた。

そうすると、まおちゃんのつま先だけが見えるから。


先を続けないわたしに痺れを切らしたのか、まおちゃんが口を開く。

容赦なくて、躊躇いもない。


「好きだった。和華のこと」


それが聞きたかったんだってこと、ちゃんと伝わってた。

ホッとしたのはきっと、まおちゃんならそう言うんだろうなって、どこかでわかっていたからだ。


まおちゃんは、だから、と続けた。


「和華が俺のことを好きでいると、困るんだよ」


「……なんで?」


「俺は止まったのに、和華の気持ちだけずっと膨らみ続けるの、しんどいだろ」


そのしんどいって、まおちゃんが? わたしが?

心当たりならいくつもある。

まおちゃんを想うたびに、辛かった。


きっともう、まおちゃんはわたしのことを好きじゃないって気付いてた。


ねえ、まおちゃん。

数だけを言うのなら、まおちゃんの方がたくさん嘘を吐いたかもしれない。

だけど、最初にまおちゃんに嘘を吐いたのは、わたしだったよね。


まおちゃんの好きが止まってしまった瞬間は。

たぶん、中学2年生の冬だと思う。


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