きっともう好きじゃない。
「まおちゃんのこと、好きだよ」
昔からずっと変わらない。
いつからなのかって言われたら、明確にはできないけど。
いつの間にか、ずっと好きだった。
ふたりのうちのひとりの好きが膨らむことをやめてしまったら、もうひとつの好きも止めなきゃいけないのかな。
そうしないと、まおちゃんのこともずっと傷つけてしまうのかな。
わたしだけが背負うなら、それでいいんだけど。
どうしたって、好きの気持ちはひとりで抱えるには重すぎる。
「まおちゃんこと困らせてでも、好きでいる」
彼女がいるって信じていた頃でさえ、止められなかった気持ちを今更捨てるのは、無理なんだよ。
時間が経って、風化してしまうそのときまでは持っていてもいい?
気が遠くなるような、何年先か何十年先かもわからない時間の中で、今このときみたいに爆発してしまって、まおちゃんにぶつけてしまうかもしれない。
許して、とは言わないよ。
嫌なら、まおちゃんはどこか遠くへ行ってしまえばいい。
遠くに行かないように引き止めるまおちゃんとは違う。
わたしは、まおちゃんを止めはしない。
曲がり角にまおちゃんの背中が消えていったその瞬間から、過去と今と未来を後悔して、まおちゃんに伸ばせなかった手をそっと自分で握るんだ。
「困るって言ってるのにさ、おまえ、ほんと……」
間違ってもまおちゃんに縋らないように、膝の上で自分の両手を組み合わせた。
瞬間に真隣から直接耳に届いたまおちゃんの声に目を見張る。
おまえって、言った。
まおちゃんはいつも『和華』って名前で呼んでくれる。
おまえって呼ばれたことがないわけじゃないけど、それはいつも、本当に怒っていたり余裕がないときだった。
この期に及んで、冗談でわたしを怖がらせようとしているわけじゃないことくらい、わかる。
隣からひしひしと伝わってくる威圧感に逃げ出そうとしたとき、まおちゃんがわたしの肩を掴んだ。
両手で両肩を掴んで、力任せに引き寄せたかと思うと、わたしはまおちゃんにぶつからなかった代わりにシーツに背中をつけていた。