きっともう好きじゃない。
逆光なんて関係なくて、視界にはまおちゃんの顔しかない。
真上から零れるまおちゃんの横髪が頬をくすぐる。
「まお、ちゃん……」
目を見ているはずなのに重なり合っていないのは、まおちゃんがわずかに視線を逸らしているからなのだと思う。
肩から滑るように腕をなぞって手首に行き着いたまおちゃんの手に少しでも抵抗すると、力は増していってぴくりとも動かなくなった。
「まあ、簡単じゃないけど」
声が、降ってくる。
真上から声を落とされたことなんて、まおちゃんにも他の人にもない。
「こういう止め方とか」
一瞬だけ、まおちゃんはとても苦しそうな顔をしたけど。
どうしたの、なんでそんな顔をするのって聞く間もなかった。
「っ……ま、おちゃ」
口付けられているなんてものじゃない。
噛みついてる、まおちゃんが、わたしに。
息苦しさに薄目を開いてまおちゃんに訴えかける。
言葉はろくに紡げないけど、きっと伝わるし、まおちゃんも今していることに気づくはず。
「まお」
2文字の続きを飲み込む。
まおちゃんが押し込んだ。
吐息と、舌で。
見たことのないまおちゃんだった。
きっと、目の前にいるのはまおちゃんじゃない。
まおちゃん、じゃなくて。
「眞央……、」
そう、呼ばないといけないような姿の君がいた。