きっともう好きじゃない。


まおちゃんが好きなこと、ちゃんと伝えたら、びっくりする?

もう知ってることだから、びっくりしないよね。


ねえ、まおちゃん。

わたしね、まおちゃんはわたしのことが好きだって思ってたよ。

手紙に書いてあるから、10年前まではわたしはまおちゃんのいちばんだった。


変わってしまった瞬間のこと、ぼんやりと覚えてる。

ずっと、一時も離れずにそばにいたはずなのに。


少し離れたのなら、ちゃんと少し戻らないと取り戻せなくなる。

そんな簡単なことに、気付けなかった。


中学生の頃、手を繋いで歩くことが何となくできなくなってしまったときから、隣にいることに変わりはないんだけど、まおちゃんへの距離が遠くなった。

隣にいたら自然とぶつかっていたはずの手が、伸ばさないと届かなくなったくらいの些細な距離だけど、その隙間ってブラックホールだったんだよ。

埋めたくても、もう、埋まらないんだ。


「まおちゃん、次これ」


会話が途切れて、溝になってしまう前に、箱の中身を取り出していく。

手紙だけじゃなくて、昔気に入っていたおもちゃだったり、ふたりで映る写真が入ったこの箱を、まおちゃんは受け取らない。

どちらのものでもないから、ふたりで持っていようと決めてこの箱に入れているけど、保管しているのはわたしの家だから、実質わたしのものになってる。


そうやって、まおちゃんはわたしに残していくんだ。

まおちゃんの欠片を、思い出を、想いを。


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