きっともう好きじゃない。
帰り道はまおちゃんと手を繋いで歩いた。
繋ぐ、というよりはその場から家の前まで、ずっと手を引かれていた。
わたしがまおちゃんを好きなこと、もう伝わっているはずで。
何も言われないことが不安と安心とを半分に分けてる。
問うこともできない。
何のこと? って言われるのもこわいし、今返事をされるのもこわい。
エレベーターを降りて家の前に着いたとき、まおちゃんはわたしの手を一層強く握って、それからすんなりと離した。
「和華」
何か言いたそうな顔を見て、咄嗟に首を横に振る。
まおちゃんはまたごめんって言って、自分の家に入った。
家にはちょうどお母さんがいて、顔色が悪いと言われた。
だから、少し調子が悪いと伝えておいた。
明日のための布石だ。
日付が変わって朝になったくらいで、気持ちがスッキリと切り替わるわけがない。
翌日、思っていた通り、朝から体調を崩した。
気持ちだけが不安定で体に支障がないよりはずっと都合が良くて、考えたくないことから逃げるために眠りについたその先でも夢にもやもやとした影のようなものが蠢いて、数十分置きに目が覚める。
土日の間もずっとそんな調子だったけど、明日も悪かったら病院に、というお母さんの言葉を受けてか、体調は月曜日には元通り。
気持ちだけが重いまま、学校へ向かった。
いつもはまおちゃんと一緒に家を出るんだけど、顔を合わせたくなくて、時間をズラした。
遅くするとまおちゃんはエレベーターの前で待っていそうだったから、何十分もはやく。
通学路には同じ制服の生徒は誰もいなくて、このまま学校についても誰も来なければいいのにと思う。
案の定、教室にはいちばん乗りだったけど、そのうち続々と登校してきた。
誰も何も言わない。
わたしに向かっては、何も言わない。
影で呟かれる方が耳に入ってくるのはなんでだろう。
わたしがまおちゃんを好きなこと、ではなくて。
ほとんどは、わたしへの妬みの言葉だったと思う。
隣のクラス、まおちゃんのクラスメイトのユマちゃんだけじゃなくて、まおちゃんに告白をした人はわたしのクラスにも他学年にもいたらしい。
そんなこと、知らなかった。
ユマちゃんが初めてだと思ってた。
初耳だけど、知らない方がよかったことをたくさん聞いた。