きっともう好きじゃない。
箱の中身をひっくり返して思い出話をしていたら、9時を過ぎていた。
「あ、まおちゃん。もう始まってるよ」
「えっ、あ……やべえ」
ハッと時計を確認したまおちゃんが挿しっぱなしだった充電器からスマホを取ってベッドに腰掛ける。
わたしも箱の周りに散乱する物や写真を放ってまおちゃんの隣に座る。
リアルタイムで配信される動画サイトを開いて、放送中の番組をタップすると、ちょうどオープニングが終わるところだった。
ドラマなんだけど、放送圏外だからテレビでは観られなくて、かつこの動画サイトは有料だから、まおちゃんのスマホで毎週チェックしてる。
わたしのパソコンから契約すれば良かったなあって思うけど、小さなスマホ画面をふたりで覗き込むのは嫌いじゃない。
まおちゃんの手が疲れないように、ふたりの太ももの上にクッションを置いて、その上にスマホを乗せる。
あらすじから気になって観始めた原作は知らない話だけど、先の展開がわからないってワクワクする。
一時間がすぐに過ぎて、まおちゃんが観賞タイムのために買ってきたお菓子と飲み物を開けたのは次回予告までしっかりと観終えたあとだった。
「っはー! 息止めてたわ。なあ、この後どうなるんだろうな」
「え、息止めるようなシーンなかったと思うんだけど。次の次で最終回だし、これで結ばれたら尺足りない……どうなるんだろう」
顎に指先を置いてまおちゃんを見やると、なんとも形容しがたい表情をしていた。
眉は寄せたいのか下げたいのかわからないし、くちびるは噛み締めたいのか突き出したいのか、はっきりしてほしい。
「和華のそういう目のつけ方、すげえと思うよ」
「うん? そう? ありがとう」
「褒めてねえから」
はあっと大袈裟なため息をついたまおちゃんがクッションを取り払って、スマホを持ったままベッドに横になる。
目を閉じて、余韻に浸っているところなんだろうけど、気にせずにチョコレートのパッケージを破る。
わたしの好きなチョコレート。
いつも同じだと飽きてしまうから、たまに期間限定のとか、食べたことないやつを買ってきてくれる。
自分で買おうとすると、ハズレだったら嫌だなあって思うけど、まおちゃんが選ぶチョコレートはいつも美味しい。
だから、好きなチョコレートが増えていく。