きっともう好きじゃない。


「なんで?」


「……おねがい、まおちゃん」


理由は聞かないで。

わたしが勝手に、まおちゃんを好きな気持ちを止めるから。

もう膨らまないように。

もう、まおちゃんに届きたいって望まないように。


「俺、和華のこと好きだよ」


以前のわたしなら、その告白を素直に喜べた。

だけど、今はもう、やめてって叫んでる。


「もう、とまろう。まおちゃん」


わたしはまおちゃんが好き。

まおちゃんはわたしが好き。

重なり合うと、きっと今よりもっとつらいよ。

わたしが、つらいんだ。


だから、止まろう。

一方だけが止まるのは、止まらなかった方もつらいから。

どちらにならないように、ふたりとも止まろう。


「ごめんね、まおちゃん」


わたしがごめんねって言ったとき、たぶん、まおちゃん泣いてた。

わたしの涙は止まったはずなのに、まおちゃんの目から一筋の光が流れたから。


しばらくして、まおちゃんは『いいよ。じゃあそうしよう』って言った。

だけど、これからも幼馴染みは存続で、って。


お互いの願いを飲みあって、まおちゃんとは並んで歩いた。

だけど、その手が繋がれることはなかった。


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