私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
「知りませんよ、そんなこと。
さっさと出勤しますよ」

ちょうど手近にあったネクタイを掴んで引っ張る。
バランスを崩した佑司は慌てて壁に手をついた。

「チーがいってらっしゃいのキスしてくれない……」

「えっ、うわっ」

覆い被さるように彼が抱き着いてくる。
しかも、しくしくと泣きマネしていて鬱陶しい。

「チーがいってらっしゃいのキスしてくれるまで俺、出勤しない……」

なんだこいつは。
本当に面倒だな。

仕方ないので佑司を思いっきり引き離す。
眼鏡の奥から本気で泣いていたのかちょっとだけ潤んだ瞳が私を見ていた。

「……はぁーっ」

もう癖になりつつあるため息をついて、一瞬だけ唇を触れさせた。
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