私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
もうこの場合、NOが正解だって知っている。
でも私の手を掴む駿の手が、私を見つめる駿の瞳が、そう言わせなかった。

「……うん」

手を掴まれたまま店を出る。
すぐに人気のない近くの路地に連れ込まれた。

「僕さ。
前に、チーにあやまりたいことがあるって言ったよね」

「……う、うん」

私の顔横、しかも出口側の壁に手をつき、駿が私を見下ろしてくる。

「借りてたCD捨てたって……」

「あれ、嘘」

ふっ、っと皮肉るように口もとだけで彼が笑う。

「チーに特定の相手がいるって知って、適当に言っただけ。
だって僕……」

ゆっくりと近づいてくる駿の顔を、間抜けにもじっと見ていた。
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