私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
「そう、ですね。
ちょっと」

笑って誤魔化してみせながら、濡れた顔を手のひらで拭った。
ただの喧嘩だったらいい。
でもこれは。



ソファーの隅で膝を抱えて丸くなり、佑司の帰りを待つ。
今日は一次会で帰って、二週もおあずけになった甘い時間を過ごすはずだったのだ。
朝、楽しみだって佑司はとっても嬉しそうだった。
なのに、なんでこんなことになっているんだろう。

「早く帰ってきてください。
あやまりますから……」

あのとき、私がどうすればよかったかなんて正解はわからない。

駿と話なんかしなければよかった?
でもそれだと彼はもっと拗らせていただろう。

キスされなければよかった?
でも男の力は強く、振り払えなかった。

すぐに佑司に誤解だって説明すればよかった?
でも佑司に取り付く島もなかった。

「答え……答え……」

正解を見つけようと、必死にいくつもTLを読む。

「朝……」

気がついたら、朝日が昇ってきていた。

けれど答えはいまだに見つからない。
佑司も帰ってこない。

きっと私が正解を見つけなければ、佑司は帰ってこない。

充電器に繋ぎっぱなしの携帯は熱を持って熱かった。
それでもひたすら、どこかにある答えを探し続けた。
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