私の赤点恋愛~スパダリ部長は恋愛ベタでした~
ようやくお姉ちゃんは笑ってくれたけどまだ苦しそうで、僕は悲しくなったんだ。


そのうち、お姉ちゃんは会社員になった。
会社員もやっぱり、たまにしか家には帰ってこないらしい。

「また来るから。
それまで元気でいてね」

最近の僕は少しずつ、身体を動かすのがつらくなっていた。
それでもお姉ちゃんを心配させたくなくて、尻尾を振ってみせる。

記録的猛暑だというその夏は、弱っている僕にはつらすぎた。

「一護!」

もう開かないまぶたを開けると、泣きだしそうなお姉ちゃんの顔が見えた。

「一護、一護」

泣きやんでほしくて顔を舐めてあげたいんだけど、僕はもう起き上がれない。
精一杯の力で手を舐めたら、ますます泣かれた。

「一護、一護」
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