きみのひだまりになりたい


怖いよね。その思いが、言葉が、やさしいとは限らないもんね。わかるよ。真っ直ぐ生きるのって、たいがい難しい。逃げないとやってらんない。

独りじゃ、誰も、何も、守ってくれない。


ふたりなら。ひとりじゃないなら。


きみのために、やさしく在れる。




「あ、あの……隣にいる方は?」


「ぁ、ぇ、えっと……」




木本くんの影に半身を隠していたわたしに、視線が集まった。がっちり握られた手に、新川さんが気づいた。これは俗に言う、恋人つなぎなるものだ。かしげていた首がぴんと正される。


考えあぐねる木本くんは、単なる紹介に口ごもった。思考回路が正常に働いていないようだ。脈拍も大いに乱れているにちがいない。



――わたし。わたしは。



大きな手のひらの形に、うすっぺらいわたしの手をぴったりとすり合わせる。一度指を開き、また折り重ねる。密着した部分に微熱が帯びていく。


あぁ、どうしよう。わたしまで緊張してきちゃった。困ったな。

……でも、うん。このドキドキは、わるくない。なんて、思ってしまうよ。




「初めまして。わたし、田中まひるっていいます。

木本くんと、付き合ってます」




笑って告げた。つっかえることなく、平然と、さも当然のように振る舞った。うまく笑えている自信は、なぜだか強く持っていた。


言っちゃった。
堂々とうそついてやったよ。


宙に放たれた言葉は、花火のように発火し、衝撃を与える。ドキドキが、ドクドクに変わる。ようやく夏の暑さが体内にしみこんだように、血液が沸騰していく。頬骨の位置が赤らんでいくのがわかった。


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