きみのひだまりになりたい



「は」


「やっぱり! 木本くんのカノジョさんだったんですね!」


「朱里、カノジョいたのか!」




カレシくんが不平不満をこぼしかけたが、ぱちんと新川さんが手を叩いて遮った。見るからにテンションを上げたふたりに、今さらうそだとは明かしにくい。無愛想な口が黙って閉ざされた。


気まずかった空気が解消された。いくぶん気楽になり、声色も明るくはずむ。木本くんだけは、未だに解けこめきれていないけれど。




「わたし、新川 (アカネ)といいます。木本くんとは中学が同じだったんです」




新川さんは、大人びた顔立ちをしている。ちょっとつり目がちな目元が特徴的で、笑うと細い線になるところがあどけない。艶めいた茶髪は、サイドにまとめ、耳の下あたりでおだんごに結ばれている。

結月ちゃんが「かわいい妹」なら、新川さんは「きれいなお姉さん」というイメージだ。高校2年生とは思えない。


水色を極限まで天然水で溶かしたような浴衣には、青い金魚が泳いでいた。ぴちゃんっ、と。手に持つビニール袋の中で、一匹の金魚が跳ねた。パクパクと口を開閉させてぐるぐる回っている。青い金魚が珍しいのだろう。




「こっちは、幼なじみの」


「どうも。眞田(サナダ) 遥陽です」




幼なじみというだけあり、阿吽の呼吸はばっちりだ。


眞田くんは、爽やかな好青年をそのまんま具現化したような容姿をしている。傷み知らずの黒髪は軽く整えられているが、ノーセットでも全然恰好いいと思う。

オーバーサイズのシャツは、濃い青色。胸元のポケットは生地が異なり、水彩模様に染められている。全体のコーディネートを見ても、新川さんの浴衣の色味と合っている。とても絵になる。


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