きみのひだまりになりたい
「木本くんにこんな美人なカノジョさんがいるなんて、びっくりだよ」
「ほんとにな。連絡してもあんま返ってこねぇし、ちゃんと高校生活送ってんのか心配してたんだぞ」
「……、ああ、わりぃ」
「……よかったよ。充実した毎日送ってるみたいで。……よかった」
「うん。木本くんには田中さんがついてるんだもん。安心だね」
新川さんがわたしに向かって笑いかけた。いっそう顔を紅潮させながら、大げさなくらい首肯してみせると、新川さんはやわく目を細めた。
とん、と眞田くんの拳が木本くんの胸に当たる。その拳の中にはあらゆる感情がひしめき合っていた。木本くんは取りこぼすことなく受け取り、渋く含み笑いする。不整脈が落ち着いていくのが、分厚いたなごころ越しに伝わった。
「木本くん。今、幸せ?」
大切だった人の、大切にしたい問いかけ。
隣を一瞥すれば、黒い瞳が潤んでいた。あぁ、やっぱり、きれいだなあ、とわたしまで涙腺をゆるめそうになっていると、そのきれいな枠の中にわたしの輪郭がぼやけて映った。
木本くんはつないだ手をより強め、目を眇めてほほえんだ。
「ああ。……ああ、幸せだって思うよ」
「ふふ。見てて伝わってくるよ。本当に幸せそう」
「すてきな人と出会えてよかったな」
……ずるい、なあ。
ドクドクが、ドックンドックンに変わる。激しさを増した心音は、骨の髄にまで圧力をかけていく。それこそ左胸の内側で、世界一大きな花火が打ち上げられたみたいな感覚。
苦しいけど、苦しくない。どうしてだろう。おかしいね。