きみのひだまりになりたい


幸せだって、言ってくれた。聴かせてくれた。うそかと思った。でもうそじゃなかった。本当だった。本当の、本心だった。わたしにも伝わったよ。真っ直ぐすぎて、ちょっと感動しちゃった。


わたしも。わたしもね。本当に、心から、幸せだって言える。



今、この瞬間だって。




「新川は?」


「え……?」


「今、幸せか?」




教えてほしいこと。
聴きたかったこと。

今だから、向き合える。


あのときの「大丈夫」は、大丈夫になりましたか?




「……うん、」


「幸せだよ。……ううん、幸せに、する」




うつむくようにうなずく新川さんを抱き寄せ、眞田くんは芯の通った口調で誓いを立てた。あわてて顔を上げた彼女は、彼の名前をささやきながら、彼の肩先にこめかみを添える。


ラフなTシャツの袖口が下方へ沈んでいく。木本くんは肩を撫で下ろし、若干背中を丸めながら目頭を押さえた。涙こそ流さなかったものの、その身軽になった姿は、温かなひだまりに包まれていた。


怖かったね。苦しかったね。もう大丈夫だよ。これ以上傷つかなくていいんだよ。自分をめいっぱい愛してあげて。ほら。世界は、存外、やさしいよ。




「……そっか。木本くん、わたしのこと、ずっと気にしてくれていたんだね」


「……っ」


「ありがとう。今日、会えてうれしかった」


「新川……。お、おれも……話せてよかった」



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