きみのひだまりになりたい


ベンチにへたれこんだ。古びた板がギシリとへこみ、木のくずをはらはら散らす。わたしはテーブルにうでを伸ばした。割り箸をつかみ、ぱきりと割る。それぽっちのエネルギーで指が痙攣(ケイレン)した。

かまわずにもうひとつの割り箸をどかし、パックを開けた。ソースをべっとり塗りたくられた麺をつまみ取った。慎重に口に運んでいく。冷たい。へにゃへにゃとしてやわらかく、べちょべちょとして水っぽい。




「……おいしい」




うそ。うそ。うそ。

おいしくない。おいしく食べれない。


でも。だけど。

あの言葉は――「大丈夫」は、うそじゃなかった。


つもり。




「っ、ごほっ、……は、っ」




ひと切れの麺を流しこんだ直後、のどが絞まったような焦燥感に襲われた。咳きこんでも、浅い息と唾しか吐き捨てられない。

暑い。熱い。自分勝手な熱に、浮かされる。


手がすべった。割り箸を卓上に落っことす。砂のついた割り箸を握り直そうとするが、手に力が入らない。手元を見てみれば、血管の色が際立つ手の甲に、うっすらと赤い(マダラ)が浮き出ていた。



自分でもやばいなって、自覚していた。こうなることはわかっていたから、静かにおとなしくしていれば大丈夫だって思ってた。どうせちょっと経ったら元に戻る。やばいのは最初だけ。すぐに大丈夫にしようとしていた。うそじゃなかった。


うそに、なってしまった。

わたしの、バカ。見誤った。数ヶ月ぶりで、軽く考えすぎていた。


だめなのに。このうそだけは。「大丈夫」を大丈夫じゃなくするのは、木本くんを傷つけてしまうのに。


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