きみのひだまりになりたい
かぶりを振った。木本くんは途中で言葉を飲みこむ。口角を上げたまま目を合わせれば、まぶしくて、まつ毛が震えた。
そうじゃない。うそをつかないんじゃないの。あのね。わたし。わたしは。
「うそ、つけないの」
しいて例えるなら、それがわたしの――古傷。
「うそをつくとね、身体が拒否するんだ。体温が上がって、呼吸困難になって、やばいときには発疹とか出たりする。おかしな体質でしょ? でもね、最近は比較的症状が落ち着いてきた……と、思っていたんだけど、この前は悪運が重なっちゃって」
「……な、」
「うそ、ついて、ごめん。『大丈夫』じゃなくなって……ごめんね」
ありがとう。その5文字よりも、無責任な3文字が舌先からこぼれていく。ぽろぽろと繰り返しあふれ出ては、病み上がりの心身を責め立てる。
ぜんぶ終わってから打ち明けるって、われながら卑怯だな。でも、だって、怖かった。木本くんの傷ついた顔を、もう見たくなかった。わたしのうそで、傷ついてほしくなかったんだよ。
いつだってそうだ。
うそって、どうしたらやさしくなるんだろう。難しいな。わたしにはできっこない。
「……な、んで」
「木本くん?」
「なんでうそついたんだよ。ああなるってわかってて、なんで、俺なんかのために」
「なんかじゃないよ」
語気を奪い取るように否定した。それ以上先は言わせない。手のひらの大きさが足りないぶん、木本くんの手の甲を指先でしっかりとくるんだ。光が当たる。温もりを帯びていった。