きみのひだまりになりたい


実は、ひと足先に聞いちゃったんだ。まひる、って。呼んでくれた木本くんと、夢の中で逢ったんだよ。なんてね。そう話したら、どんな顔をするのかな。笑ってもいいよ。むくれたっていいんだよ。




「木本くん。好きだよ」




ぴくり、と木本くんの肩が微弱に振動した。勢いよく頭を起こす。木本くんはへんてこな表情をしていた。ぽかんと呆けているようで、平静を保てずに頬肉を引きつらせている。


わたしはオレンジジュースを持った手を揺らした。木本くんの紙パックに、わたしのを寄りかからせる。わたしのがより人肌に近く、底を圧している。水滴と水滴がひとつの雫になり、ベンチを突いた。




「この、オレンジジュース」


「……え、は……?」


「きらいじゃないよ。好き。好きなんだよ」


「……知ってっし。会ったときから何べんも言ってたじゃねぇか」


「うん。……うん、そう。でも、ここで、聴いてほしかった」




柑橘の香りが風にさらわれた。爽やかさを散らしながら吹いていく。嗅覚をつんとやさしく刺し、のど元に残る酸いも甘いもとたんにざわめきだす。古傷に塩を塗られたようで心苦しくもあったけれど、けして苦くはなかった。



5文字も3文字も、それ以上も、それ以下も。

あのとき言えなかったこと、ぜんぶ。


うそじゃない思いを、どうか、届けさせて。




――わたし、ずっと、きみに会いたかった。



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