きみのひだまりになりたい


そう言って細っこい二の腕を力ませる結月ちゃんは、わがクラス、2-Aの文化祭実行委員だ。つまり、文化祭のリーダーポジションになる。ホームルームでもテキパキと司会進行を努めていた。



2年になってクラス替えをし、はじめはクラス全体にまとまりがなく、どことなくよそよそしかった。そんな2-Aを、学年イチ団結力あるクラスへと変えた立役者は、何を隠そう、結月ちゃんであった。


元より、見た目と中身のかわいらしさに、人気を博していた。おっとりした中和剤で、ときおりあざとさが見え隠れしていたがどうも憎めない。何より努力家で、意外と意地っ張りなところが、愛嬌があって好感を持てた。


人気が顕著になったのは、体育祭でのこと。リレーのトップバッターだった結月ちゃんは、出鼻をくじかれ、転んでしまった。しかし、砂汚れの顔を微塵も気にすることなく、立ち上がったのだ。

あの勇姿には、男も女も関係なく心を打たれた。感動したし、惚れた。みんなが結月ちゃんを応援していた。結果はビリだったけれど、確固たる団結力が生まれた。おかげで応援部門ではぶっちぎりで優勝をもらった。



あの一件から、結月ちゃんは、クラス内外問わず人気者だ。よく頼られ、ちやほやされ、告白されている。結月ちゃんは誰に対しても平等にやさしかった。


文化祭実行委員になったのも、クラスメイトからの圧倒的な支持によるものだ。推薦形式で選出することになり、真っ先に名前が挙がったのだ。当の本人は謙虚な姿勢であった。みんなして怒涛の推しアピールをするものだから、そこまで言うなら、とこそばゆそうに結月ちゃんが折れた。



かくいうわたしは、愛されているなあ、とニマニマしながら傍観していた。

友だちとして鼻が高かった。自慢、と言うと、語弊があるかもしれない。1年生のころから仲よくしているわたしにとって、結月ちゃんはいちばんの友だちであり、かわいいかわいい妹のようだった。


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