きみのひだまりになりたい



放課後は、結月ちゃんと帰るのが日課だ。特別な用事でもない限り、一緒に下校し、たまに寄り道をしている。1年生のころからずっとだ。今日で何回目になるのか、わたしにも結月ちゃんにも数え切れない。


その日は結月ちゃんが先輩に呼び出され、下校時間がいつもより少し遅くなった。呼び出した相手は、結月ちゃんと同じ、文化祭実行委員の委員長だった。おそらく告白だろうと見当がつく。結果は火を見るよりも明らかだった。

詮索はしない。話題にも出さない。結月ちゃんは聞いてほしいときに話す。そう、言わなくてもわかってる。



いつもどおりの様子で戻ってきた結月ちゃんと、商店街に立ち寄った。浴衣の下見だ。レディースの洋服を取り扱うお店のショーウィンドウに、浴衣を着たマネキンが立っている。


この地域では、数年に一度、近くの神社で秋祭りが催される。それが今年だった。夏祭りの時期が過ぎても、浴衣が並んでいるのはそのためだ。


夏祭りは予定があって行けなかったけど、秋祭りは結月ちゃんと行くつもり。夏休みのうちから約束していた。楽しみすぎて、浴衣を新調しようか悩んでいるところ。




「まひるちゃんは紺色が似合うと思うなあ。これとかどう?」


「わ……かわいい、ね」


「あたしはこっちのピンクで、おそろい!」




ガラスをへだて、マネキンの着こなす浴衣に夢中になる。右には、紺色。左には、ピンク色。ケースのいちばん隅っこには、橙色。どれも幾何学模様だが、帯や着こなし方がちがっていた。3種類ともかわいらしく見えた。それと同じくらい、自分にはしっくりこない。


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