きみのひだまりになりたい
結月ちゃんはどれも似合っちゃうんだろうな。左のピンクはまさしく結月ちゃんにぴったり。でも……わたしが、紺色かあ。浴衣はすてきだけど、どうだろう。着せられている感じにならないかな。この中なら、紺色よりも橙色のそれのほうが、合っているような気がしなくもない。
「まひるちゃんはどう思う?」
「わたし、は……」
言おうとした。考えていたこと、包み隠さず、正直に。今までそうしてきた。そうやって“友だち”をやっていた。
たとえば。
正直に言ったとして、笑われたら?
ううん。結月ちゃんは笑ったりしない。否定しないで、抱きとめてくれる。
それは、結月ちゃんがやさしいから?
本当は傷ついていたかもしれない。否定されて消沈したわたしみたいに。その傷を知らなかっただけかもしれない。わたしの作り笑顔に誰も気づかなかったみたいに。
わたし。わたしは。
やさしく、なかった……?
「まひるちゃん?」
「っ、あ、えっと……」
「?」
「わ、わたし、も、おそろい、いいと思う」
「いいよね、おそろい!」
はしゃぐ結月ちゃんに、心底ほっとした。引っかかりを覚えたのどが、すっと楽になる。
やはり合っていた。このうそは、ついてもいいうそだ。わたしも、結月ちゃんも、傷つけない。みんなにやさしいうそ。たとえ、そこに、自分の思いなど添えていなくても。
「まひるちゃんは髪が長いだから、いろいろアレンジできそう。見なくてもわかる。ぜっっったいに浴衣姿きれい!」
「……そう、かな?」
「そうだよー! あたしも伸ばそうかなあ。あ、今からじゃ間に合わないか」
わたしは髪が長いほうがいい。こっちのほうが似合っている。結月ちゃんが言うんだからまちがいない。髪の毛を切ろうと思っていた、なんて、明かす必要なんかない。きっときれいじゃなくなるから。わたしらしくないから。だから。
言葉をごくんと生唾とともに押し返した。結月ちゃんはボブの髪を指先でくるくるといじりながら、とぼけたようにほころぶ。トゲが深くのめり込んでいくのを見て見ぬふりをして、わたしも愛想よく頬をたるませた。