きみのひだまりになりたい
ひとりで帰るのはいつぶりだろう。帰り道ってこんなに長くて、つまんなかったんだ。忘れていたよ。隣にはいつも結月ちゃんがいて、他愛ないことでよく笑っていた。それが当たり前だった。
独りぼっちは、ひどく、むなしい。
帰路の途中、鳥居あたりがざわついていた。覗いてみると、明日の準備の真っ最中だった。町のえらい大人たちがそろい、屋台の組み立てや雪洞のくくりつけをしている。
結月ちゃんと行く約束をしていた、秋祭り。どんな浴衣を着て、最初は何を食べて、どこで花火を観て。念入りに計画を立て、期待をふくらませていたのがもはやなつかしい。
ケンカした手前、そういう気分にはなれない。明日は来れそうにないな。せっかくの約束も計画も、ぜんぶむだになっちゃう。でも……。
無意識に鳥居をくぐっていた。規則的に敷き詰められた石の上を、慎重に進んでいく。なぜか歩きづらかった。
お社はずいぶんと朽ちていた。陽気に祭りごとを迎えていた鳥居付近とは対照的に、お社の周りは粛々と沈黙を守り、ほこりをかぶりながらも神聖な質感を保っている。清く、正しく、ほこり高い空間は、もろくても確固たる存在感があった。
「神さま……」
祈ったら、助けてくれますか。
ここに逃げてもいいですか。
うそつきも、救われますか。
そよ風が、髪を乱した。いつの間にか髪についていた枯れ葉が、ひらりひらりと宙を泳ぐ。変色した葉の山にあえなく散っていった。これが返答なのだと悟った。
うつむきかけた視界に、黒ずんだ灰色を捉えた。お社の脇にある小道を行くと、石畳の階段があった。草木に覆われ、見つけづらいが、たしかに小山の内部へとつながっていた。